フットボール好きとして知られるソナーポケットのeyeron(アイロン)と、その蹴り仲間でもあり自身も破天荒なフットボール人生を歩む狂犬ライター菊池康平によるフットボール対談をお届けする。気心の知れた2人の掛け合いにより、今まで知らなかったeyeronの一面が引き出されている。eyeronのフットボール愛はもはやアーティストの枠を飛び越え、アスリートの域に達しつつある。
text by Kohei KIKUCHI
文=菊池康平菊池 eyeronくん、一昨日ぶりですね(笑)!
eyeron そうですね、僕たちかなり頻繁に会っていますよね。まさか康平くんがライターとして取材に来るなんて、出会った頃は想像もできなかったですよ(笑)。
菊池 確かに。僕らが出会ったのは2013年の夏頃でしたよね、確かフットサルコートで。
eyeron そうそう。背が大きいし、その場を仕切っていたからインパクトがありました。なんかすごい人なのかなって(笑)。それでずいぶん歳上かと思っていましたからね。そうかと思ったら、その後1年間くらい一緒にフットサルをしてから、会社を辞めてサッカー選手になることを目指して海外へ行きましたよね。
菊池 そうでしたね。出会った頃が懐かしいです。1年間アイロンくんと一緒にいて刺激を受けて、「再度プロサッカー選手になり、満員の観客の前でプレーしたい」という夢が再燃しちゃいました! それで仕事を辞めてチャレンジしたラオスでは犬に襲われ、狂犬病の予防接種を6回も受けることになり、その後に行ったインドでも何かに噛まれて、1週間入院し生死を彷徨いました。
eyeron 色んな伝説を残してきますね(笑)。
菊池 ははは……。車の中とかでもいつもサッカーの話なんかをしてるけど、今日はさらに突っ込んで話を聞かせてもらいますよ。狂犬菊池なんで、噛み付きますよ(笑)。……と言ってみたものの、実際は海外で犬とか動物に噛み付かれちゃう方なのですけど。
菊池 そもそも、eyeronくんはいつからサッカーを始めたんでしたっけ?
eyeron 小学4年くらいからクラブ活動で始めました。それで中学にはサッカー部がなかったのでクラブチームに入って。緑東という強いチームで名古屋グランパスのジュニアユースにも勝ったりしていたと思います。小学生の時は仲間で楽しくやっていたけど、クラブチームはうまい選手が集まって来て、激しい競争というものを初めて意識しましたね。
菊池 当時のポジションは? 出会った頃から点取り屋の印象が強いですが。
eyeron 当時は動き回れるからという理由でボランチでした。ボランチは真ん中でくさびを受けて臨機応変にプレーしないといけない。それは自分の性格に合っていたのかも。音楽でもそういう役回りでやっていると思うしね。
菊池 では当時、好きだった選手は?
eyeron (ジャンフランコ)ゾラ(元イタリア代表監督)や(ジュゼッペ・)シニョーリ(元イタリア代表)かな。背の低い選手や、スター性があって組織にも順応できる選手が好きでした。いぶし銀みたいな。今はプレーしている中で好みも変わってきています。
菊池 そうなんですね。では中学以降のサッカー人生を教えてください。
eyeron 高校ではサッカー部に入ったんですけど、1年生の終わりくらいに辞めました。それ以降はサッカーはやらずに音楽の道へ進みましたね。
菊池 そう考えると、サッカーをやっていなかった期間が長いですよね。
eyeron 10代でも遊びではたまにフットサルはやりましたが、それまでみたいにガッツリとはやっていなかったです。体が動くので、テレビ朝日ミュージックチームのメンバーとして(音楽関係者が参加する大会である)音蹴杯には2回くらい出させてもらいましたが、球蹴りに対して今みたいに熱くはなれていませんでした。そして今から約1年半前に康平くんと出会った。確か、夏の熱い日でしたね!
菊池 そうでしたね。そもそも何で僕らのフットサルに来てくれたんでしたっけ?
eyeron フランプールの(山村)隆太くんがうちのメンバーのmatty (マティ)と仲が良くて、それで紹介してもらって参加したんですよ。
菊池 そっか。それからは毎回誘っていたけど、当初は月に一度か2カ月に1回くらいの参加でしたよね。でもある時を境に、毎回のように顔を出してくれるようになったけど、それは何かきっかけがあったんですか?
eyeron うーん、スポーツは自分がやったことに対して必ず結果が出るじゃないですか。練習したらドリブルがうまくなったり、ボールタッチがうまくなったり。それはライブでも音楽でも同じで。もちろん、試合の勝ち負けには運もあるけど。サッカーはチームスポーツだし、その時の自分の気持ちにリンクしてスイッチが入ったんだと思う。
菊池 なるほど! それにしてもフットサルにハマりましたよね(笑)。
eyeron 本当ですね! 久々にフットサルを再開して1年半くらい経つけど、改めて楽しさやボール一つで繋がるコミュニケーションは素晴らしいなって思います。アリーナツアーで東名阪を回った時も音楽に対してみんなが一つになって熱狂したり楽しい空間が生まれることを経験したけど、サッカーもボール一つで熱狂できる。フットボールと音楽には共通点がありますよね。
菊池 確かに、ソナポケのライブを見ているとそのことがよく分かります!
eyeron 「飲みニュケーション」よりも、一緒にボールを蹴ることの方がより親密になれると感じていますし、それがフットボールの素晴らしさだと思います。
菊池 そういう素晴らしさを感じていたからこそだと思うのですが、フットサルで知り合った仲間に声を掛けてプロミスというチームを作りましたよね。プロミスで1年以上に渡って活動してきていますが、eyeronくんにとってプロミスはどんな存在なんですか?
eyeron 第2の青春かな! みんなで泣いて、笑って、興奮したりとか。普段なかなか味わえないことを今この年齢で味わえているし、今となってはファミリーだと思っている。だからこうやって出会えたメンバーをすごく大切にしている。
菊池 みんな職業などもバラバラですが、チームワークがありますよね。
eyeron みんな職種とか全然違ってもボールを介することで関係なく一緒にできているし、それが一番いいことかなって思います。
菊池 学生時代の青春を思い出すような感覚ですか?
eyeron そうですね。サッカーを離れていた期間でいろいろな人生経験をしたんですよ。落ち込んだり音楽を辞めようかなって思ったりしたこともあったから。いろいろな、人との出会いもあれば裏切られるようなこともあったし、そういう経験をしてきたからこそ、今の仲間はボール一つで繋がっていると感じられますね。
菊池 利害関係はなく、純粋に一生懸命みんなで蹴れているのがいいですよね。
eyeron そう思います。経験を重ねた自分の今の年齢にフィットしていると感じています。
菊池 この1年くらいを振り返ってどうですか?
eyeron 康平くんもいろいろとありましたしね! そう言えば、大阪ライブ後にフットサルやりましたよね。2デイズの1日目の夜にね。
菊池 本当にeyeronくんは鉄人だと思いました。ライブであれだけ歌って走って汗かいて、その後にフットサルとは! ライブではかなり緊張感もあると思うし、改めてこの男はすごいなと思いましたよ。
eyeron あれも康平くんを始め、プロミスのメンバーが10人くらい東京からライブを見に来てくれたからだね。
菊池 メンバーみんなでユニホームを着てライブ会場に入ったから目立ち過ぎて、次のライブから「ユニホーム禁止」になったり、車の相乗りで大阪まで向かったりと思い出深いですよ(笑)。そういえば、台湾ライブにも行きましたね。ライブではeyeronくんを中心にMCを中国語でやっていたのを見てすごく感動しました! かなり勉強したのでは?
eyeron 新しいことを始める時って情熱があるからね。1年半前にフットボールを再開した時の情熱と一緒で、どんどんやっていくことで自分が成長していくんですよ。フットボールとまた出会って、やるたびにうまくなれている自分の姿に気付いたからこそ、中国語という新しいことにも前向きに挑戦できたのかな。
菊池 なるほど。では僕自身はいろいろな国へ行っているので海外ネタを振りますけど(笑)、海外のライブのお客さんの反応はやはり日本と違いますか?
eyeron 海外の良さってその場のノリで良かったらオーディエンスは反応して乗ってくれること。曲を知らなくても乗ってくれるところは違いますね。でもそれってフットボールも同じで、名もないサッカー選手が海外に行って、そこで観客を湧かしたらその日はスターになれるよね。
菊池 「誰だあいつ?」ではなく、実力で勝負できる感じですね。確かに海外では日本よりも肩書きに関係なく評価してくれると感じます。
eyeron そういうことが台湾での初の海外ライブで勉強になったし、もっともっとソナポケとしての可能性を与えてくれました。
菊池 僕は行けなかったけれど、シンガポールライブの際にエンジョイでフットサルをしたと聞きました。現地の人は遠慮なくガツガツとシュートを打ってきたりするのでは?
eyeron エンジョイでも貪欲にシュートを打ってくるところが日本人とは違う感じがして面白かった! この経験があったから、帰国後のフットサルでは自分の気持ちも変わりました。「ゴールを取ってやろう」という気持ちが強くなって、新たにスイッチが入ったきっかけとなりました。
菊池 確かにそれ以降、eyeronくんのプレーが変わったと感じます。それまでは前線でボールを仲間に下げる時もありましたが、パスよりもまずはシュートを意識していて、対面の敵を抜きにかかる積極性が強まりましたよね。選手として怖い存在になった。
eyeron 技術じゃなくてシンガポール人の強い気持ちですね! 康平くんも海外でプレーして思いませんでした?
菊池 思いましたよ。ストリートサッカーとかでも「俺が点を取る」ってギラギラしていて選手として怖いなと思ったし、気持ちを前面に出してくる。コンクリートなのにスライディングしてきたり(笑)。
eyeron そうそう。技術ではなく気持ちでやってくるのはすごく大事なことだと思う。
菊池 海外ではDFをやってるけれど、積極的に勝負してくるので上手くなかったとしても怖い。何を仕掛けてくるか分からない。
eyeron 日本で言うとLove(Love Me Do)ちゃん(笑)!
菊池 必ずチャレンジしてくる(笑)!
eyeron サッカー好きはみんな知ってるLoveちゃん!
菊池 Loveちゃんがいっぱいいるのがシンガポール(笑)。
eyeron あの海外経験で、少なからずサッカーだけじゃなくて音楽やライブに対しても考えが変わりました。ライブで中国語がうまく話せなくても、より気持ちを伝えようとか、気持ちが本当に大事なんだなって。伝えようという気持ちがなかったら伝わらないし、点を取ろうという気持ちがなかったらそこに踏み出せないと思うんですよね。
菊池 そういう気持ちでやってたら、シュートを打ったら誰かに当たって入ったり。シュートを打たないと始まらないですよね。
eyeron そうそう! そういうところに繋がっているから、より気持ちが大事だと思う。だから本当にシンガポールで蹴れたことは良い経験になりました。ソナポケで海外ライブする時は1日くらい残ってでも軽く現地で蹴って帰りたいな(笑)。言葉は関係ないからね、ゴール取ったら特にね。
菊池 点を取ったらヒーロー、ダメならダメではっきりしてるし。肩書きは関係ないし。それが海外の面白さですね。
この、アーティストとは思えないフットボール対談はまだまだ序章。続きは後半へ!
eyeron(アイロン)
11月3日生まれ、愛知県出身。ソナーポケットのヴォーカルとして、魂の込もった歌声で聴く者の心を動かす。フットボール好きとしても知られ、自身が立ち上げたFC PROMISEでもプレーする。2015年2月25日に、約2年ぶり5枚目のオリジナルアルバム「ソナポケイズム⑤ ~笑顔の理由。~」をリリース。5月からは、ソナポケ史上最大規模となる全国ツアー「ソナポケイズム Vol.5」を開催。詳しくはオフィシャルHPをチェック!
http://www.sonapoke.jp/
菊池康平(きくち・こうへい)
1982年7月27日生まれ、兵庫県出身。プロサッカー選手を目指して学生時代と会社員時代の夏期休暇などを利用し12カ国に挑戦。会社を1年休んで挑んだ13カ国目のボリビアでプロ契約を果たす。飛び込みで現地のチームと交渉し、テストを受ける道場破りスタイルを得意とする。2014年6月に再度プロ選手になるため、9年間勤めた会社を辞めて海外へ渡るも、ラオスで犬に襲われ緊急帰国。その後もインドで何かに噛まれて入院し、またも志半ばで帰国。日本ではアーティストの友人たちと結成した「危険なカオリ」というフットサルチームの幹事を務める。