副編集長・加藤未央が自ら筆を取る本コラム、その名も『パンツを右足から穿くように』。皆さんはこの場を通じて、加藤未央のことを少しずつ理解し始めているのではないでしょうか。彼女は食べ物への愛情が深く、甘いものに弱く、そして甘い言葉には厳しい。今回はそんな彼女からの、「ラブレター」をアナタへ。まだまだ寒いですが、巷の男性たちがソワソワしてホットになるこの時期この週末に、さてアナタはどこへ出掛けますか……?
text by Mio KATO
文=加藤未央バレンタインデーといえばどのデパートもこぞってチョコレート商戦という流れになっている昨今、バレンタインデーとは愛を口にする日だと私は思っている。
たぶん私は、人と比べて「好き」の基準が厳しいと思う。「まぁ、好き」程度なら逆に多くを迎え入れる割に、「好き」の中に入ってくるものは極めて少ない。初めて彼氏ができたのは二十歳をゆうに超えてからだったし、ドラクエでいえばⅤ(ファイブ)派だし、チョコレート以上の嗜好品はきっと見付からない。
30歳を過ぎてフリーでいると「どんな人がタイプですか?」と聞かれることが多くなるけれど、その度に止まって考えてしまう。例えば好きな人がいたとして「その人のどこが好き?」と聞かれたところで、たぶんうまく説明できる人なんていないんじゃないかと思う。少なくとも私は、説明なんてできない。理屈や条件で誰かを好きになるような器用な人間じゃないことを、自分で知っている。この自分の不器用さに、自分でイラつく時がある。
理屈で説明できない「好き」の中に、Fリーグがある。たかだか1シーズンしか見ていないけれど、この魅力に溢れるモノをどうやって表現すればたくさんの人に伝わるのか、その確たる方法が分からなくてもどかしい。
2014/2015シーズン最後のセントラル開催が先日、名古屋のテバオーシャンアリーナで行われた。Fリーグの試合方式はホーム&アウェイ、そしてセントラル。ホーム&アウェイはその言葉の通り自分たちのホーム会場で行われる試合であり、アウェイは対戦相手のホーム会場に乗り込んで行う試合のこと。セントラルとはその節の全試合を1カ所の会場で行う集中開催のことを指す。
今シーズンのセントラル開催は開幕の代々木(東京)から始まり駒沢(東京)、神戸(兵庫)、北海道(北海道)、横浜(神奈川)、名古屋(愛知)の全部で6カ所で行われた。通常のFリーグの観戦チケットが前売りや当日、また会場によって価格は多少違うものの、大人で平均2000円、小学生で約700円だとして、セントラルのチケット価格もそれとほとんど変わらない。普段は1試合あたりのその料金に比べて、セントラルの時は1日最大5試合をその値段で観戦できてしまうのだから、本当にお得な価格設定だと思う。
が、しかし! なんと先日の名古屋セントラルでの観客動員数が危機的な数字であったことを皆さんはご存知だろうか。金曜日から日曜日に渡る3日間を掛けて行われた全12試合で、観客数は最少が615人、最多で1979人、平均値が1019人。テバオーシャンアリーナのキャパが約2500席ということを考えると、平均で半分も動員できなかったというのはなんとも寂しい数字ではないだろうか。ましてやプレーオフを懸けて熱戦が繰り広げられているこの時期でのその数字は問題提起に値する。
サッカーにしてもフットサルにしても、会場に足を運んで観戦することを私は何よりも大事だと考えている。会場の雰囲気、サポーターの応援、選手のパフォーマンス、監督のたたずまい、すべてにおいて体感できるのはその場にいなくてはありえない。さらに言えば、サッカーはテレビで気軽に見ることができるけれど、Fリーグに関しては気軽に見られる手段がないので(現在はDMMのFリーグチャンネルで月額使用料を払って視聴するのが唯一の方法。各節1試合だけ無料配信も実施されている)、会場に足を運ばない限りその感動を味わうことができないのだ。逆に言うと、会場に観戦しに来てくれる人が減っていけば、どんどん閉鎖的なスポーツになってしまう。そんなことは絶対に避けたい。
特に先日の名古屋セントラルに関して観客動員数もしかり、一番の問題点はもともと当初の予定では沖縄で開催されるはずだったという点ではないだろうか。昨年10月の中旬に、いきなり「Fリーグにおける諸般の事情により」沖縄セントラルから名古屋セントラルへの変更になったのだ。そんなふわっとした理由で変更なんて、それに合わせて沖縄に行く予定を組んでいた人たちや沖縄セントラル開催を楽しみにしていた人たちにとってたまったものじゃない。それぞれのチームがFリーグを盛り上げようと試行錯誤しながらいろんな手段を使ってできる限りのことを頑張っている中で、舵を取っているリーグ側がそんなにふわっとしていちゃいけないと思う。観客動員数を増やすために尽力すべきだし、そのためにFリーグ自体にお金を掛けてもっとプロモーションすることも考慮すべきではないだろうか。
地域に密着して愛される、身近なヒーロー。
彼らから与えられる感動や興奮は言葉にできないし、彼らを支えるのは私たちにしかできない。
「是非、Fリーグの会場に足を運んでみてください!」と言って、何人にこの気持ちが伝わるか分からない。でも、何度でも声にしてしつこく言ってしまう。それは、私がFリーグを好きだから。
「好き」に忠実でいることが自分のポリシーなので、そこだけは守りたい。
飽きることなく普遍的に愛情を注げるモノ、それが私にとっての「好き」だと思うので。その気持ちが叶っても叶わなくても。
加藤未央(かとう・みお)
1984年1月19日生まれ、神奈川県出身。 2001年に「ミスマガジン」でグランプリを獲得し、05年には芸能人女子フットサルチームにも所属。07年から09年まで「スーパーサッカー」(TBS)、09年から15年まで「スカパー!」 のサッカー情報番組「UEFA Champions League Highlight」のアシスタントを務め、Jリーグや海外サッカーへの知識を深めた。現在は、ラジオ番組「宮澤ミシェル・サッカー倶楽部」などにも出演し、フットサル専門誌「フットサルナビ」でも連載中。15年4月からオフィシャルブログ「みお線」もスタートした。http://ameblo.jp/mio-ka10/