オーバー30の女性チームが集う全国サッカー大会で目にした光景にはまさに、“フットボールカルチャー”があった──。蹴ることも見ることも、応援することも、感じることも、読むことも、語ることも、想いを馳せることも、そして人々とつながることも、そのすべては、ボールによって紡がれていく。フットボールの決して変わることのない本質を今、改めて感じている。
Text and Photo by Yoshinobu HONDA
文=本田好伸フットボールカルチャーとは、人々の生活に寄り添ったものであると思う。ひいきの地元チームをスタジアムで応援したり、海外フットボールを遠く離れた場所から観戦したり、週末や仕事終わりに仲間とボールを蹴ったりということも重要だが、それが必ずしもフットボールのすべてではない。
仕事から帰宅して部屋着に着替え、お風呂上りにソファーにもたれながら、傍に転がるボールに触れてみたり、小さなボールを抱き抱えながら寝息を立てる愛らしい我が子を眺めたり、故郷にあるプロチームが勝利したニュースを聞きながら、古き良き時代の仲間のことを思い浮かべてみたり、なんだっていいのだ。
カテゴリーを問わず、一生懸命にプレーする選手の人となりや、その人物のルーツが明かされた記事を目にして、その選手に思いを馳せたり、自分のかつての夢を重ねてみたり、明日への勇気や元気をもらったり、そんな出来事が、人々の日常を彩っていく。
ふとした瞬間に、ボールが与えてくれるつながりを感じ、そこにささやかな幸せを味わえる生活こそが、“フットボールカルチャー”なのではないかと常々感じている。

とある30歳以上の女性チームの日本一を決する大会を取材したときのことだった。
試合途中、ある選手が交代でピッチに投入されると、フェンス越しに応援していた小さな子どもが、遠巻きに渾身の声援を送った。
「ママー! がんばれー!」
その隣では、選手の夫らしき人や、おばあさん(選手の親らしき人)が見守っている。ああ、これがフットボールのある生活かと感じ入り、心が洗われるような気持ちになったのだった。
試合が終わると、子どもは一目散にその選手の元へと駆け寄り、彼女はピッチ上で見せていた真剣な表情から一転、母親の顔に戻っていく。
きっとこの一家の今晩の食卓は、“ママ”の試合の話題で盛り上がるんだろうな。妻の奮闘をねぎらい、夫が腕をふるって料理を作っているかもしれないし、妻は妻で、「今日は久しぶりに思い切りボールが蹴れて楽しかったわ、また来週から頑張れそう。応援ありがとね」なんていう言葉を家族に掛けているかもしれない。
そうやって、フットボールがある日常は、いつでもそこに、あり続ける。
ボールが紡ぐ数々の物語はきっと、いつどこに、誰にでも、それぞれの人生の身近にあるものに違いないのだろう。
本田好伸(ほんだ・よしのぶ)
1984年10月31日生まれ、山梨県出身。 日本ジャーナリスト専門学校卒業後、編集プロダクション、フットサル専門誌を経て、2011年からフリーランスに転身。エディター兼ライター、カメラマンとしてフットサル、サッカーを中心に活動する。某先輩ライターから授かった“チャラ・ライター”の通り名を返上し、“書けるイクメン”を目指して日々誠実に精進を重ねる。著書に「30分で勝てるフットサルチームを作ってください」(ガイドワークス)