フットボールに魅せられた俳優、姜暢雄(きょう・のぶお)。ボールを追い掛け続けて見出した、「主役じゃなくていい」という答え。ゴールの喜びを知り、そして何よりも、そこに至るまでの道筋を大切にしている。
なお本記事は、Football Culture Magazin ROOTS Vol.07(2015年12月発行)に掲載された内容をお届けする。
text by Kohei KIKUCHI
photo by Yoshinobu HONDA
小学校、中学校にサッカー部はなく、中学生の頃は野球部に所属し、練習後に仲間とボールを蹴って遊んでいた。サッカーに興味を持ったきっかけは海外リーグ。「WOWOW」でセリエAの放送に出会い、衝撃を受けた。
「(ルート)フリット、(マルコ)ファン・バステンなど、当時はACミランに釘付けで、(ロベルト)バッジョのプレーを見てからは、完全にサッカーの虜になった」
そして、自身も高校生から本格的にサッカーを始めた。念願の部活で練習に励み、未経験者だったにもかかわらず、サイドハーフのポジションをつかみ取った。
高校卒業後は家業を継ぐという、目の前に敷かれたレールに乗っていく予定だった。しかし1998年、姉が応募した「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でフォトジェニック賞を受賞し、地元・兵庫から上京。芸能事務所に所属すると、その後は劇団、舞台、映画、ドラマなど数多くの作品に出演し、俳優として生きて行く道を選んだ。
姜は、「舞台とサッカーは似ている」と言う。その一つは、「ゴール」という共通点。「芝居では、全員が“終演”というベクトルに向かっていくのと同じように、サッカーでは、まさにゴールに向かっていく。これは本当に同じような感覚」。サッカーを愛する姜は、気が付けば、舞台上でもサッカーをプレーしているかのようだった。
「舞台でもサッカーでも、自分はストライカーではなくシャドーストライカーが性に合う。主役じゃなくて、『あいつ、なんか気になる』っていうポジションに常にいたい」。
そうやって舞台とフィールドに立っているうちに、決定的な一致点を知ることになる。「両方とも、空間を埋めていく作業だということ。舞台上では会話をする場所によって見栄えが全く違うし、どうしたらよく見えるのかというセオリーがある。つまり、限られたスペースをどれだけ生かせるのかがポイント。サッカーでポジショニングが悪い人は、舞台での動きもイマイチってことがよくある」
役者とサッカーという一見すると別物の作業に、あくまでも自然体で向き合い、身を投じて、同じような感覚で楽しんでいる。「もちろんゴールは最高だけど、でもそれ以上に、得点までのプロセスを楽しむタイプ。それは役者としてもサッカーのプレーヤーとしても変わらない」。アーティストはどちらかというとストラーカータイプが多いが、役者はサポートタイプが多いのかもしれない。ゴールまでの道筋を、仲間とともに“創り上げる”イメージだ。
今夏、ソナーポケットのeyeronが立ち上げたフットボールチーム、「FC PROMISE」に加入した。アーティスト系のチームが頂点を争う、年明けに行われる「音蹴杯」という大会に出場し、チームの勝利に貢献することを目指している。
「今後は、大先輩の勝村政信さんのように長くプレーし続けたい。高校卒業後にボールを蹴らなかったブランクもあったし、簡単なことじゃないと思う。継続して蹴るということが最大の目標」
ゴールよりも、あくまでも過程を大切にしながら、姜は今日も仲間とともに、“舞台”に立つ。
姜暢雄(きょう・のぶお)
1979年3月23日生まれ、兵庫県姫路市出身。1998年に「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でフォトジェニック賞を受賞し、芸能界入り。「忍風戦隊ハリケンジャー」でテレビデビューを果たし、舞台や映画、ドラマなど、俳優として数々の作品に出演。高校生時代にはサッカー部に所属し、現在でもサッカーやフットサルなど定期的にボールを蹴り続けている。
姜暢雄出演中の舞台「honganji」をチェック!
http://www.stars-honganji.jp
■開催会場・日時:
●大阪公演<新歌舞伎座 http://www.shinkabukiza.co.jp>
2016年1月20日(水)、21日(木)、22日(金)、23日(土)、24日(日)
●名古屋公演<中日劇場 http://www.chunichi-theatre.com>
2016年1月29日(金)、30日(土)、31日(日)
●東京公演<EX THEATER http://www.tv-asahi.co.jp/ex-theater/>
2016年2月17日(水)、18日(木)、19日(金)、20日(土)、21日(日)、22日(月)、24日(水)、25日(木)、26日(金)、27日(土)
■原作:保志忠彦 ■脚本:斎藤栄作 ■演出:ウォーリー木下 ■題字:紫舟 ■衣装:小篠ゆま
■出演:陣内孝則/市川九團次/水夏希/諸星和己/大橋吾郎(特別出演)/渡辺大輔/滝口幸広/佐野和真/ルウト/姜暢雄 他
■主催:Honganji舞台製作委員会
■企画:社団法人スターシアター
■チケット料金:全席指定・消費税込(S席13,000円、A席10,000円)
※未就学児童の入場はお断りします。
※車いすをご利用のお客様は、車いすスペース席をご購入ください。
(イープラスのみで販売)車いすスペースS席<車いす1台>13,000円、<車いす1台+ご同伴者1名>26,000円
■一般発売:好評発売中 ■お問い合せ先:Honganji舞台製作委員会(03-5772-3220)
■公式サイト:www.stars-honganji.jp
菊池康平(きくち・こうへい)
1982年7月27日生まれ、兵庫県出身。プロサッカー選手を目指して学生時代と会社員時代の夏期休暇などを利用し12カ国に挑戦。会社を1年休んで挑んだ13カ国目のボリビアでプロ契約を果たす。飛び込みで現地のチームと交渉し、テストを受ける道場破りスタイルを得意とする。2014年6月に再度プロ選手になるため、9年間勤めた会社を辞めて海外へ渡るも、ラオスで犬に襲われ緊急帰国。その後もインドで何かに噛まれて入院し、またも志半ばで帰国。日本ではアーティストの友人たちと結成した「危険なカオリ」というフットサルチームの幹事を務める。