8月14日から16日に都内で開催されたバーモントカップ 第25回全日本少年フットサル大会は、ブリンカールFCが優勝。愛知県に同大会で初めてのタイトルをもたらした。愛知といえば、2020年にフットサル・ワールドカップを誘致している地域でもある。新たな「フットサルどころ」として、ブリンカールの活躍は大きな起爆剤となるかもしれない。そして彼らの戦いぶりは、日本のフットボール界に必要なフットサルの重要性を伝えるものでもあった。
Text and Photo by Yoshinobu HONDA
文=本田好伸小学生年代のフットサルの頂点を決める大会「バーモントカップ 第25回全日本少年フットサル大会」が行われ、愛知県代表のブリンカールFCが、千葉県代表のマルバ千葉fc U-12を下して初優勝を飾った。
今大会はもともと秋口に各都道府県予選が始まり、翌年1月に決勝大会が行われていたが、全日本少年サッカー大会の決勝大会が冬季開催に移行したことを受けて、入れ替わるように今回から夏季開催となった。全国47都道府県から代表1チームが集まり、4チームずつ12グループに分かれてのグループ戦1次ラウンドを行い、グループ1位と、1次ラウンドの2会場のうち成績上位2チームずつの4チーム、計16チームが決勝ラウンドへと進出。ノックアウト方式のトーナメント戦を行い、頂点を決する方式だ。
国内のジュニア年代におけるフットボール事情は、年々変化してきている。サッカーの全日本少年サッカー大会が8人制になったのは2011年だが、この年代における、子どもたちのプレー機会の創出は、長年にわたって叫ばれ続けてきたことである。もちろん、人数を減らすことでボールに触れる回数を増やすという単純な理由だけにとどまらず、そのルールにおける様々な創意工夫によって、子どもたちのレベルアップが目指されている。
それと同じような理由から、この7、8年くらいの間に、ジュニア年代におけるフットサルをプレーすることの重要性も周知されてきている。2009年からフットサル日本代表を率いるミゲル・ロドリゴ監督も、スペインで積み重ねられてきたコーチングメソッドを日本にも導入し、トップカテゴリーだけではなく、ジュニア年代からフットサルをすることの意義を改めて提唱し続けてきた。
「9歳まではフットサルがフットボールのオフィシャルスポーツになるべき。フットサルのゲームで学べることは、サッカーをしていることだけでは学び得ない細かいことが習得できる。その先に、よりよいサッカー選手になりたい、より優秀なサッカー選手になりたいと思っているのであれば、なおのこと取り組んでほしい」
サッカーの6倍と言われるボールコンタクトによって、子どものモチベーションは高まり、技術、戦術など、あらゆるシチュエーションを体験できることでスキルが高まる可能性が上がり、狭いスペースでのプレーによって判断力を養うこともできる。ミスが多ければ多いほど、どんなときでもリスクとともにプレーするということもまた、覚えていけるのだ。
そんな視点でとらえると、今大会も普段からサッカーに取り組むチームが大半を占めるなかで、試合を進めるごとに創意工夫が見られるようになっていった。いつもより狭いピッチで何を選択すべきか、自分のスキルを効果的に出すにはどうしたらいいのか。選手自身が考え、選択し、ピッチで体現していた。
決勝戦を戦った両チームのそれが顕著だった。
1次ラウンドのグループ第2戦で敗れて涙し、一度は敗退を覚悟したブリンカールの選手たちは、「俺たちは何をやっているんだ」と奮起し、そこから自分たちの最大の武器であるテクニックをどうやって発揮するのかを考えてアグレッシブなプレーを続け、相手を圧倒する戦いで勝ち上がっていった。マルバ茨城 fc U-12との準々決勝では、フットサルらしいセットプレーのバリエーションを披露して、相手を打ち破った。
「選手の成長には本当に驚いた。こうして優勝できたのは彼らの頑張りに尽きるので、我々が本当に感謝している」(古居俊平監督/ブリンカールFC)と指揮官も目を細める戦いぶりだった。
準優勝のマルバ千葉fc U-12も際立つ強さを見せた。自陣から攻撃を組み立てていく「フットサルの戦い」を熟知した彼らは、このバーモントカップでは毎年のように決勝ラウンドへと駒を進め、存在感を放ってきた。今年はそれ以上に、個々の技術と組織力が融合し、他チームを凌駕する試合を見せた。ラウンド16でコンサドーレ札幌U-12、準々決勝でセレッソ大阪 U-12と立て続けにJリーグの育成組織のクラブを撃破し、4強入りを果たした。
決勝戦でも相手を圧倒する時間を作り、2点ビハインドながらも残り1分で同点に追い付き、延長戦に持ち込む勝負強さも見せた。最後は相手の執念と、ほんのわずかな駆け引きに敗れて涙したが、マルバ千葉が示した戦いぶりは、大会を見守った多くの人々を刺激したに違いない。
「僕らのやりたいことをやり切れた。悔しいけど、楽しかった。本当にいい決勝戦ができた」(浅野智久コーチ/マルバ千葉fc U-12)
フットサルに造詣がある両チームによる決勝戦は、この年代がフットサルに取り組む価値を改めて伝え、その重要性を改めて知らしめる大会となった。
本田好伸(ほんだ・よしのぶ)
1984年10月31日生まれ、山梨県出身。 日本ジャーナリスト専門学校卒業後、編集プロダクション、フットサル専門誌を経て、2011年からフリーランスに転身。エディター兼ライター、カメラマンとしてフットサル、サッカーを中心に活動する。某先輩ライターから授かった“チャラ・ライター”の通り名を返上し、“書けるイクメン”を目指して日々誠実に精進を重ねる。著書に「30分で勝てるフットサルチームを作ってください」(ガイドワークス)