普段はもっぱらサッカー専門、週末はひいきのチームの観戦にスタジアムに足を運ぶという筆者が、Fリーグの3試合目の観戦に赴いた。ミックスゾーンでは、Fリーグ最高レベルの立ち居振る舞いで知られる“模範的な選手”金川武司のコメント取りに成功。でもこの日のゲームで最も気になったポイントは、内容よりもむしろピッチ外にあった。
photo by Yoshinobu HONDA
文=山岸典前回のFリーグ初観戦に続き、3試合目は第12節のフウガドールすみだとバルドラール浦安の試合をチョイス。すみだのホーム、墨田区総合体育館に足を運んだ。
もちろん、過去にすみだの試合を見た経験はないので、どのような戦いになるかは分からない。ただ、以前ライターの仕事で須賀雄大監督のインタビュー記事作成に携わったことがあったので、少しだけイメージは持っていた。「“切り替えゼロ秒”という切り替えを重視するテーマを掲げている」と、須賀監督はその記事中でも語っていたので、前回観戦した浦安とシュライカー大阪のような“慌ただしい”ゲームになるのではないかと。
でも実際はちょっと違った。試合を通じて両チームともに非常にアグレッシブに戦い、パスを回して相手を崩そうとする場面が多く見られたので、僕自身は“慌ただしい”とは思わなかった。前回の浦安は、縦に急ぐシーンが多かったように感じたが、今回の試合はまた違った内容だったと思う。この試合は、スピードに乗ったドリブルを得意とする加藤竜馬の出場機会が少なかったため、前回見た大阪戦とは違った戦術を採っていたのかもしれない。サッカーと同様にフットサルもチーム状況や対戦相手によって戦い方や戦術、メンバー構成を変えてくることがあるのだろうと、この試合を見て感じた(とか言いつつ、選手の交替記録をメモしていた先輩に聞いたら、加藤の出場時間が極端に少なかったわけではないということのようだったが……)。
試合後、すみだの金川武司にミックスゾーンで話を聞いた。「常に切り替えゼロ秒という切り替えの早さをベースにして、チーム一丸となって戦うことを意識している」ということだった。須賀監督が話していたことと相違なかった。そう考えると、これこそがすみだの唯一絶対のスタイルなんだろう。次節以降もこの試合のようなアグレッシブな展開になるのだろうと予想できるし、そのイメージを持って見た時に、彼らの試合が僕の目にどう映るのか、とても興味深い。
ただこの試合で一番気になったのは、両チームの戦いぶりではなく、“会場の雰囲気”だった。客席は満席に近い状態で、立ち見が出るくらいの盛況ぶりであり、前回の町田市立総合体育館で観戦した際に感じることのできなかった盛り上がりと一体感を味わった。試合前に配られていたチラシには須賀監督と浦安の米川正夫監督が向かい合って写り、互いに挑発的なコメントで“場外戦”を演出していた。これは米川監督がすみだの宣伝広告に全面協力して実現した企画らしい。敵同士ながらもこうしてお客さんを集める仕掛けに協力し合える関係があるからこそ、素晴らしい会場の雰囲気を作れたに違いない。
クラブがお客さんを巻き込んで試合を盛り上げようとする試みはとても大事なことだと思う。Jリーグでもこういった企画はあまり見掛けない。僕が知る限りでは、川崎フロンターレとFC東京による“多摩川クラシコ”というライバル同士の大一番くらいだ。それくらい、Fリーグも面白いことにチャレンジできているということ。サッカーにしてもそうだが、もっとこういったクラブ単位での試みが増えたら、よりたくさんの人がフットボールを楽しめるのではないかと感じた。
山岸典(やまぎし・つかさ)
1993年6月8日生まれ、福島県出身。 日本大学国際関係学部に在学中、学生団体WorldFutに所属する。大学2年で通っていたスポーツマネジメントの専門学校で学ぶなかでフットボールライターを目指すと決意。現在はインターンやアルバイトなどでライターとしての活動の幅を広げている。横浜F・マリノスの熱狂的なファンでもあり、毎試合スタジアムに赴きオリジナルの試合レポート作成に取り組んでいる。